可哀想な102号室
四年前に入居してきたときは普通に話してた。
その2年後くらいだろうか。朝7時に不動産屋さんの電話で起こされた。
なんでも真下の102号室の住人から、水が上の部屋から漏れてきてると電話があったから、すぐ102号室に行ってくれ、とのことだった。
ボロアパートだからついに崩壊が始まったか、と思い、102号室に行ったところ、同居人が出てきて水漏れなんて起きてないとのこと。
取り敢えず部屋に入れてもらったんだけと、たしかにどこからも水は漏れてない。天井に染みすらない。
でも102のオジサンはテレビの後ろに水が溜まってるという。
見てみたけどもちろん水など溜まってない。
すると今度はオジサンのそばのポットの上に水が溜まってるとおかしなことを言い出した。
それで同居人のオバサンがポットを動かしたら、動かしたせいで水が無くなったと怒りだした。
その時にやっと不動産屋さんが来て、水漏れがオジサンの幻覚であることを確認して、やっと私は解放された。
精神病というよりは、痴ほう症のように私には見えた。
そしてその1年後くらいに、102はweekdayのdaytimeはずっと介護サービスの人が3人入れ換わりで介護されるほどになってしまった。
それでもナマポジジイ103は介護サービスの人が来ない土日に102を怒鳴り付けていた。
介護サービスの人が来てるときは、お互い様ですからね、なんて良き隣人を演じてたくせに。
で、結局102は契約期間が1ヶ月以上残ってたけど先月アパートを退去した。
恐らく介護施設があいたタイミングなんだろう。
このアパートに引っ越して来なかったら、ナマポジジイ103の隣の部屋に引っ越して来なければ、足が不自由ながらも生活保護のお世話になることもなく、普通の老後が送れたはずなのに。可哀想でならない。
しかし介護サービスの人は、なぜ102がこうなってしまったのか、長時間一緒にいればわかったはずだ。
福祉事務所にちゃんと報告したのだろうか。介護サービスの費用は生活保護から出てるのだから、最低限の報告義務はあると思うんだけど。
多分何も報告してないからナマポジジイ103は介護サービスを受けられるようになったんだろう。